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- 「飛び恥」などと言われる飛行機の環境負荷がどれだけ高いのか、飛行機の代わりにクルーズ船に乗ったらどうなるか、などに興味を持って乗り物別に二酸化炭素排出量を調べてみた。
乗り物 | CO2排出量[g-CO2/人km] | 備考 |
鉄道 | 11 | JR東日本の場合 |
新幹線 | 8.1~13.0 | 東海道新幹線の場合 |
飛行機 | 96 | 国内線の場合 |
自動車 | 202 | 燃費が11.5km/Lの車に一人で乗った場合 |
クルーズ船 | 440~460 | 飛鳥IIの場合 |
【参考】フェリー | (推計)19.5 | 貨物船と貨物列車との比較から推計 |
乗り物別のCO2排出量比較 ※参照情報や試算方法は下記に記載
- 環境面では鉄道が最も排出量が小さく、新幹線でも変わらなかった。環境負荷を考えたら鉄道がおすすめ。
- 「飛び恥」などと飛行機の環境負荷の高さが言われている通り鉄道より排出量は多かった。とはいえ、燃費の悪い自動車に一人で乗る方が負荷が高いので、そこまで否定するものではないだろう。
- 自動車は燃費と同乗者次第だった。燃費の良い車に複数人で乗れば飛行機の半分以下にもなりうるが、それでも鉄道には及ばない。
- クルーズ船は海上交通であるとはいえ、街を運んでいるようなものなので最も排出量が大きかった。移動手段として使うのは避けたいところ。
- 参考までに、フェリーの近似値として貨物船の排出量を見ると貨物列車の2倍弱だった。鉄道と同じ比率とすれば飛行機や自動車よりはおすすめの移動手段だと思われる。
- 時間、料金、環境負荷を考慮に入れて、目的に合わせた乗り物を選択しよう。
鉄道
- まず鉄道についてみると、JR東日本は単位当たりのCO2排出量を公開しているのでそれを示す。
- ①単位当たりのCO2排出量:11g-CO2/人km
- 環境(JR東日本グループレポート2020)
- 併記されている鉄道全体平均の18g-CO2/人キロより少なかった。首都圏のように乗車率の高い市場があるためかもしれない。
- ちなみに、環境負荷には、国立環境研究所の日本国温室効果ガスインベントリ報告書 2020年度4月版 和文の.3-48『本カテゴリーでは、航空(1.A.3.a)、自動車(1.A.3.b)、鉄道(1.A.3.c)、船舶(1.A.3.d)、その他輸送(1.A.3.e)からの CH4、N2O 排出量の算定について記述する』などCO2以外もあるし、ライフサイクルアセスメントで言われるように製造時や廃棄時の環境負荷もかかるが、これらは考慮していない。(以下同様)
新幹線
- 新幹線については東海道新幹線で試算してみた。
- ①N700系のぞみCO2排出量(東京~新大阪):4.2kg-CO2/席
- アニュアルレポート2020 地球環境保全への貢献(JR東海)
- ②東京~新大阪の実キロ:515.4km
- 東京~博多間、新幹線と在来線の距離が同じってホント?(マイナビニュース)
- 単位当たりのCO2排出量:8.1g-CO2/人km ※①×1,000/②
- 席数と同数の乗客が東京から新大阪まで乗った場合なので、満席にならない場合や途中下車の乗客がいればこれより排出量は増えるし、逆に自由席車両などに立っている人がいれば排出量はこれより減る。
- ③東海道新幹線輸送人員:477,200人/日
- 新幹線ユーザープロファイル調査2019(ジェイアール東海エージェンシー)
- ④新幹線の旅客輸送人キロ(2018年度):56,277百万人km
- 財務・輸送の状況(東海旅客鉄道)
- 平均乗車距離:323.1km ※④×1,000,000/(③×365)
- 単位当たりのCO2排出量:13.0g-CO2/人km ※①×1,000/(④×1,000,000/(③×365))
- 乗客の平均乗車距離を上記のように見積もると排出量は多くなるが、いずれにせよJR東日本の排出量と同程度だった。
飛行機
- 続けて飛行機の国内線について統計情報から試算してみた。
- ①国内定期便のジェット燃料油利用:4,164,103kL
- ②国内定期便の貨物輸送量:8,011,176千トンkm
- ③国内定期便の貨物輸送量の内の旅客分:7,086,635千トンkm
- ④国内定期便の旅客:94,488,458千人km
- 航空輸送統計調査 一式 2019年(統計センター)
- 貨物輸送に占める旅客割合:88.46% ※③÷②
- 旅客分の燃料油利用:3,683,539kL ※①×(③÷②)
- ⑤ジェット燃料油の使用に関するCO2の排出係数:2.46t-CO2/kL
- 算定方法・排出係数一覧(環境省)のp.7
- 単位当たりのCO2排出量:95.9g-CO2/人km ※①×(③÷②)×⑤×1,000,000/(④×1,000)
- この数値は以下の国交省の試算とも合致した。
- ANAホールディングスの報告書からも試算してみた。
- ①旅客便のCO2排出量:1,196万t-CO2
- ②国際線の旅客キロ:50,219百万人キロ
- ③国内線の旅客キロ:39,502百万人キロ
- 統合報告書 2020(アニュアルレポート)(ANAホールディングス)p.103, 123
- 単位当たりのCO2排出量:133g-CO2/人km ※①×10,000×1,000,000/((②+③)×1,000,000)
- こちらは国内と海外を合算して平均したものになるが、統計から算出した排出量より多かった。国際線の方が、荷物が多かったり、飛行距離が長いことから多くの燃料を積んだりで、燃費が悪いのかもしれない。
乗用車
- 私が乗っている車の燃費はあまり良くないがそれで試算してみた。
- ①街乗り時の燃費:8.5km/L
- ②高速利用時の燃費:11.5km/L
- ③ガソリンの使用に関するCO2排出係数:2.32t-CO2/kL
- 環境省の算定方法・排出係数一覧のp.7
- 単位当たりのCO2排出量:202~273g-CO2/台km ※ ③×1,000/①(or②)
- 1台単位の試算なので、一人で乗れば202~273g-CO2/人kmだし、二人で乗っても燃費が変わらないとすれば101~137g-CO2/人kmとなる。
- さらに20km/Lも走るような車に二人で乗れば58g-CO2/人kmとなり、飛行機も排出量を抑えられる。
クルーズ船
- 船の環境負荷は低いイメージがあるが、クルーズ船となると都市機能を運んでいるようなものなのでCO2排出量は多いことが想定される。
- 日本を代表するクルーズ船の一つ、飛鳥IIで試算してみた。
- ①世界一周の距離:68,094km
- ②世界一周時のC重油:8,835kL
- ③世界一周時のLSGO:285kL
- 講話1_海への誘い(4県合同・関東海っ娘塾、海と日本PROJECT)
- ④乗客定員:872人
- 飛鳥II(郵船トラベル)
- ⑤C重油の使用に関するCO2の排出係数:3.00t-CO2/kL
- ⑥潤滑油の発熱量:40.2GJ/kL
- 算定方法・排出係数一覧(環境省)のp.7
- ⑦潤滑油の排出係数:0.072kg-CO2/MJ
- 参考資料 温室効果ガス排出係数(デフォルト値)(環境省)
- 潤滑油の使用に関するCO2の排出係数:2,894kg-CO2/kL ※⑥×1000×⑦
- 世界一周時のC重油のCO2排出量:26,505t-CO2 ※②×⑤
- 世界一周時の潤滑油のCO2排出量:824,904kg-CO2 ※③×⑥×1000×⑦
- 単位当たりのCO2排出量:460g-CO2/人km ※(②×⑤×1,000,000+③×⑥×1000×⑦×1000)/(④×①)
- 別の情報からも試算してみた。
- ⑧巡航速度:約18ノット
- ⑨巡航速度での1日当たりの重油消費量:90トン
- 飛鳥Ⅱ 機関室/機関プラント紹介(マリンエンジニアリング47巻2号、J-STAGE)
- ⑩重油の密度:0.80~0.96g/㎤ ⇒間を取って0.88g/㎤
- 換算係数一覧(石油連盟)
- 1日あたり進む距離:800km ※⑧×24×1.852
- 1日あたりのCO2排出量:307t-CO2/日 ※⑨/⑩×⑤
- 単位当たりのCO2排出量:440g-CO2/人km ※(⑨/⑩×⑤×1,000,000)/(④×⑧×24×1.852)
- どちらの試算からも450g-CO2/人キロ前後の値が得られた。
【参考】船舶
- 旅客船にはクルーズ船だけでなくフェリーもある。しかしフェリーは人だけでなく貨物も運ぶため旅客分の環境負荷だけを試算するのは難しい。そこで前出の国土交通省の資料の貨物分野から貨物船と貨物列車の排出量の比率を流用してみた。(フェリーの旅客部分と旅客鉄道の比率も同等だと仮定する)
- 鉄道の1.77倍の排出量があるものの自動車よりはオーダーが異なるぐらい小さかった。
まとめ(再掲)
- 環境面では鉄道が最も排出量が小さく、新幹線でも変わらなかった。環境負荷を考えたら鉄道がおすすめ。
- 「飛び恥」などと飛行機の環境負荷の高さが言われている通り鉄道より排出量は多かった。とはいえ、燃費の悪い自動車に一人で乗る方が負荷が高いので、そこまで否定するものではないだろう。
- 自動車は燃費と同乗者次第だった。燃費の良い車に複数人で乗れば飛行機の半分以下にもなりうるが、それでも鉄道には及ばない。
- クルーズ船は海上交通であるとはいえ、街を運んでいるようなものなので最も排出量が大きかった。移動手段として使うのは避けたいところ。
- 参考までに、フェリーの近似値として貨物船の排出量を見ると貨物列車の2倍弱だった。鉄道と同じ比率とすれば飛行機や自動車よりはおすすめの移動手段だと思われる。
- 時間、料金、環境負荷を考慮に入れて、目的に合わせた乗り物を選択しよう。
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素晴らしい資料ですね!!!